君へ、第三部 ――ありがとう、そして、また会う日まで

最後の手紙だ。

第一部では、あの日のことを書いた。第二部では、君がいなくなってからの日々を書いた。第三部では、ずっと言いたかったことを書く。うまく書けるかわからないけど、全部書く。

目次

ありがとう

ありがとう。

この言葉だけで、三部作を締めくくれる気もするけれど、それじゃ君に怒られそうだから、ちゃんと続きを書く。

君と出会えてよかった。本当に、それだけは声を大にして言いたい。この世界のどこかに君がいて、その君と僕が出会って、一緒に時間を過ごせた。それがどれほど奇跡的なことか、君がいなくなってから、毎日実感している。

雨の日の傘から始まって、たくさんの朝と夜を一緒に過ごして、手をつないで歩いた道がどれほどあったか。全部、宝物だ。形はないけれど、世界中のどんな宝石よりも、僕には大切だ。

君が僕に残してくれたもの

君は「物より思い出」って言う人だった。旅行に行っても、お土産よりも「あの景色、覚えてる?」って写真を見返したがる人だった。

今ならわかる。君は正しかった。

君が僕に残してくれたのは、思い出だけじゃない。生き方だ。

困っている人に傘を差し出せる優しさ。怒っていても、夜中に手を握れる強さ。できないことじゃなく、できることを見る前向きさ。雨の日にも空を好きになれる、豊かな感性。

全部、君から教わった。気づかないうちに、君は僕の中に生き続けている。

後悔していること

もっと旅行に連れて行けばよかった。「来年行こう」って先延ばしにしたままになってしまった場所が、いくつかある。

もっとわがままを聞いてあげればよかった。君はあまり自分の望みを言わない人だったから、こちらから「何したい?」って聞いてあげるべきだった。

もっとそばにいればよかった。仕事を言い訳にして、疲れたを言い訳にして、もっとそばにいられたはずなのに。

でも——これも君から学んだことだけど——後悔は、過去を変えるためじゃなく、これからを変えるためにある。君が残してくれたこの気持ちを、これからの生き方に変えていく。それが、僕にできる唯一の恩返しだと思っている。

君へ、最後に伝えたいこと

向こうは、どうだろう。君のことだから、きっともう誰かに声をかけて、笑わせているんだろうな。

僕はまだこっちにいる。もう少しだけ、こっちにいる。やり残したことがあるから。君が好きだったこの世界を、もう少しちゃんと見ておきたいから。

だから待っていてほしい。急がないから。でも、いつかきっと行くから。

その時には、また二人で空を見上げよう。君は「あの雲、犬に見えない?」って言うんだろう。そしたら今度は僕が「見える」って言う。本当に見えなくても、そう言う。君が笑うから。

君の笑顔が、僕の一番好きなものだった。

愛してる。

ありがとう。

また会う日まで。

――君の、永遠に君だけの、夫より

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